ほろうみの正解するポジ

投資の立ち位置を正しく理解するための記録╭( ・ㅂ・)و ̑̑ グッ !

2022年12月23日の週_黒田日銀が動いた

日銀は19~20日に開いた金融政策決定会合で「YCC政策における10年金利の許容変動幅を従来の0%を基準に±0.25%から±0.5%に拡大」方針を発表。このタイミングでの発表は予想されておらず完全にサプライズになって市場が一時的にパニックになった。

ロシアのウクライナ侵攻が拍車をかけたインフレ進行、それを受けての世界各国の金融引締動向を踏まえれば、安倍政権時代から続いた金融緩和政策の方針転換はいつかは来るものとして想定されていたはずだが、自分を含めてもうちょっと先だろうと油断していた市場参加者が多かった。このような方針転換は、市場の反応を考慮して段階的にできないのでサプライズを伴うのが必然だということに思いが及ばなかった。

 

中国のコロナ感染者が記録ペースで急上昇している。感染者数、変異種の発生など正確な情報が入ってこないことが怖さに拍車をかけている。日本にも流入しそうなのがさらなる気がかり。思えば習近平政権に希望的観測をすべて潰された1年だった。

 

これからは円安というぬるま湯に浸かっていたことを謙虚に認めて、希望的観測を抑えて、生き残ることを優先にした慎重なトレードを心がけたい。

 

 

 

 

 

チェック事項

  • ロシアの軍事侵攻が続く 
  • 24年秋までにマイナンバーと保険証の一本化
  • 日本のコロナ感染が第8波のサイクルに
  • 木材、半導体など需給ギャップ
  • 来年2月の値上げラッシュ
  • 2023年3月からの人的資本開示
  • タカ派寄りのFOMCが起点に
  • 中国のコロナ感染者が記録的なペースで急増
  • 20日に日銀が10年物国債金利の許容変動幅を±0.5%に拡大すると発表

 

インプット事項

  • 社会課題解決型 (業績改善よりは高レベルの課題)
  • 物価上昇局面でのプライジングの重要性
  • プライムまで成長するポテンシャルがあるグロース銘柄
  • EYを意識 EY=持分営業利益÷投資簿価
  • 巡航成長を意識
  • フローとストック

 

2022年度の方針

  • 基本的に昨年のやり方を継続し、現物の主力枠の銘柄はなるべく動かさない
  • 主力枠以外の銘柄は含み益があるうちに利益確定を意識
  • 小型株にさらに資金が抜けたときのプランB(考え中)を用意しておく
  • キャッシュ比率は状況に応じて資産の1割~4割の間でコントロール
  • 資産の1割の範囲内でショートトレード&実験トレード
  • ROE銘柄 非製造業で30以上、製造業で20以上
  • グリッチorカタリスト

 

返品率およそ2割の米小売店、返品無料ポリシーをやめるケースも | Forbes JAPAN(フォーブス ジャパン)

米国の小売店が抱えていた過剰な在庫は、2022年秋に多少は解消されたようだ。米連邦準備制度理事会FRB)の最新統計によれば、在庫率は前年末に比べて約6%減少している。これは良い知らせだ。

しかし、悪い知らせもある。今シーズンの返品量が、記録的だった昨シーズンを大きく上回るとみられているのだ。再び、商品の処分が相次ぐということである。

米調査会社コアサイト・リサーチが12月はじめに発表したところによると、ブラックフライデー(11月25日)直後の週末の返品率は、昨年同時期のほぼ2倍に達した。返品処理サービスを提供するgoTRGのリポートでは、eコマースの返品率をおよそ20%と見込んでいる。

返品無料というポリシーを取りやめるのは、それほど簡単なことではないかもしれない。調査会社ファースト・インサイトが最近公表した調査「The Discount Dilemma and Returns Risk(割引のジレンマと返品のリスク)」では、消費者の75%が「返品する際に手数料がかかる小売店では買い物をしない」と回答している。また、「返品可能な期間は、30日間から60日間が望ましい」と回答した人も約75%にのぼった。

 

日銀が金融緩和縮小、長期金利の上限0.5%に 事実上の利上げ: 日本経済新聞

日銀は19~20日に開いた金融政策決定会合で、大規模緩和を修正する方針を決めた。従来0.25%程度としてきた長期金利の変動許容幅を0.5%に拡大する。20日から適用する。長期金利は足元で変動幅の上限近くで推移しており、事実上の利上げとなる。変動幅の拡大は21年3月に0.2%から0.25%に引き上げて以来となる。

日銀は「こうした状況が続けば企業の起債など金融環境に悪影響を及ぼす」として、従来、0%からプラスマイナス0.25%程度としてきた長期金利の変動許容幅を0.5%程度に拡大することを決めた。マイナス金利政策や上場投資信託ETF)の買い入れ方針、政策金利フォワドガイダンス(先行き指針)は据え置いた。

日銀は同日、長期国債の購入額を従来の月7.3兆円から月9兆円程度に増額すると発表した。購入予定の金額についてもレンジで示す形式に変更し、より弾力的に購入額を決められるようにする。10年物国債を0.25%の利回りで無制限に毎営業日購入する「連続指し値オペ」の利回りも0.5%に引き上げる。

日銀は黒田総裁就任直後の13年に「2%の物価安定目標を、2年程度の期間を念頭において、できるだけ早期に実現する」ことを目的に大規模緩和を始めた。日銀が世の中に供給するお金を2倍に増やすことを目的に、国債ETF保有額を2年間で2倍に拡大する方針を掲げた。

インフレを抑制するために欧米が利上げに動くと日本の長期金利にも上昇圧力がかかったが、許容幅の引き上げは「事実上利上げとなり、日本経済にとって好ましくない」として、市場で金利を押さえつけてきた。もっとも、日米の金融政策の方向性の違いを背景に10月には一時、1ドル=151円台まで円安が加速した。

当初、日銀は円安は日本経済にプラスとの立場を示していたが、為替相場の急激な変動が企業活動に及ぼす負の影響も無視できなくなっている。足元の消費者物価の上昇率は3%台半ばに達している。政府・日銀が定める2%の物価安定目標を上回って推移していた。

円安が資源高に拍車をかけ、電力料金や生鮮品など幅広い品目で値上げが進む構図が鮮明になっている。事実上の利上げに踏み切ることで海外との金利差が縮小し、為替相場の急激な変動を抑える効果も期待できる。

 

変動幅拡大は市場機能改善が目的、「利上げではない」-日銀総裁 - Bloomberg

黒田総裁は、変動幅拡大は「出口政策とか出口戦略の一歩とか、そういうものでは全くない」と説明。2023年度全体では消費者物価の上昇率が2%に達しない可能性が高いとし、イールドカーブ・コントロール(長短金利操作、YCC)や現在の量的質的金融緩和の見直しは「当面考えられない」と語った。「2%の達成は見通せないので、点検や検証の検討は時期尚早に尽きる」とも指摘した。

日銀は今回会合で、YCCで0%程度に誘導している長期金利の許容変動幅を従来の上下0.25%程度から同0.5%程度に拡大した。長短金利の誘導水準や上場投資信託ETF)など資産買い入れ方針は維持した。

黒田総裁は変動幅拡大のタイミングに関しては、一時的に収まった金融資本市場でのボラティリティーが最近再び高まり、「イールドカーブの形状が歪んだ形となり、将来企業金融などにもマイナスの影響を与える恐れがあることが認識されてきた」ためと説明した。「さらなる拡大は必要ないし、今のところ考えていない」と述べた。

予想外の決定を巡り市場との対話不足を問われたのに対し、市場関係者には「非常に裏切られたような気持ちがある」とした上で、「金融資本市場や経済・物価の動向が変われば、それに応じたことをやるのは当然」と説明した。「金利の引き上げでないということは十分市場関係者にもお伝えしたい」との考えを示した。

 

みずほなどの収益にプラス効果期待、YCC修正で-銀行株は続伸 - Bloomberg

日本銀行20日金融政策決定会合で決めたイールドカーブ・コントロール(長短金利操作、YCC)の修正により、3メガバンクをはじめ国内銀行の収益に一定の影響を与えそうだ。保有国債の価格変動などのリスクがある半面、本業の貸出業務などにはプラス効果が期待できるとの声が多い。

日銀は政策金利フォワドガイダンス(指針)は維持したが、長期金利の指標である10年国債の利回りが一時0.46%と約7年ぶり水準まで急上昇した。市場では日銀が次の一手としてマイナス金利を解除する可能性があるとの見方もあり、これまで長期にわたる超低金利政策で貸出業務を中心に収益が低迷してきた銀行にとっては、待ちに待った動きと言える。

みずほフィナンシャルグループの木原正裕社長は、11月の決算会見で、仮に10年国債利回りが0.4%程度まで上昇した場合、預金と貸出金の収支の改善で200億円、国債運用利回りの改善など市場性運用で150億円と、計年間350億円のプラスの影響があるとの試算を示していた。試算の前提には、今回マイナス0.1%に据え置かれた政策金利をゼロに引き上げることなども含めている。

野村証券アナリストの高宮健氏は20日付メモで、長期金利上昇は銀行セクターにとってファンダメンタルズとバリュエーションの両面からポジティブと評価。2023年4月の日銀総裁交代に向けて、今後は政府との共同声明見直しの有無やマイナス金利撤廃の可能性などが市場で注目される可能性があると指摘した。

一方、日銀のYCC修正に伴う市場金利の上昇(国債価格の下落)は、メガバンクなどが大量に保有する国債の運用にも大きなインパクトを持つ。国債価格の下落で評価損などが拡大すれば、銀行の財務を悪化させる可能性もある。

3メガグループの時価評価の対象となる国債保有残高は、6月末からは約16兆円減ったものの、9月末時点で56兆2860億円に上る。3メガ各行の決算資料によると、9月末で約2000億円の国債含み損を抱えている。

みずほFGの木原社長は「円金利の上昇に対してリスクに備えたポジションになっている」とし、「抑制的な運営をしており、あまり影響はない」と述べた。三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)の亀澤宏規社長も、国債価格の変動リスクなどに備え、「全体としてはトレジャリー業務のポジションは抑えている」と語っていた。

 

脱炭素社会へ政府が基本方針 原子力政策の方向性は大きく転換 | NHK | ニュース深掘り

新たな基本方針では、安全最優先で原発の再稼働を進めるとした上で、
廃炉となる原発の建て替えを念頭に次世代型の原子炉の開発と建設を進めるほか、
▽最長で60年と定められている原発の運転期間については審査などで停止した期間を除外し、実質的に上限を超えて運転できるようにするなど、最大限活用する方針を打ち出しています。

また、カーボンプライシングについては、
▽企業などが排出量を削減した分を市場で売買できるようにする排出量取引を2026年度から本格稼働させるほか、
▽2028年度から化石燃料を輸入する電力会社や石油元売り会社などに「賦課金」として一定の負担を求める制度を導入することにしています。

さらに、取引市場の運営や賦課金の徴収などを担う「GX経済移行推進機構」を新たに創設します。

政府は脱炭素社会の実現に向けた民間投資を後押しするため、新たな国債、「GX経済移行債」を今後10年間で20兆円程度発行することにしていて、機構が集めた資金は、その償還にあてられます。

 

ゼレンスキー氏「支援で勝利加速」 米議会で演説: 日本経済新聞

【ワシントン=飛田臨太郎】ウクライナのゼレンスキー大統領は21日、米連邦議会の上下両院合同会議で演説した。米国によるウクライナへの支援が「我々の勝利を加速させることができる」と強調した。「あなた方のお金は慈善ではない。世界の安全保障と民主主義への投資だ」と述べ、支援の継続を重ねて訴えた。

ゼレンスキー氏の演説は30分ほどに及んだ。2023年が「ターニングポイントになる」と述べ「ウクライナの勇気と米国の決意が、共通の自由の未来を保証しなければならない」と語った。侵攻を続けるロシアを「テロ国家」と表現し「戦争の責任を負わせよう」と呼びかけた。

「ロシア軍が完全に(ウクライナから)撤退するには、より多くの大砲と砲弾が必要だ」と軍事面の支援拡大を求めた。ウクライナに巨額の支援を続けることに慎重論がある野党・共和党が下院で過半数を奪還したことを念頭に、超党派合意の重要性を指摘した。

戦時下の外国首脳が訪米し米議会で演説するのは、過去には第2次世界大戦中だった1941年のチャーチル英首相(当時)の例がある。チャーチル氏はナチス・ドイツとの戦いへ米国の支援を要請した。ゼレンスキー氏は当時のフランクリン・ルーズベルト米大統領の言葉も引用しながら「ウクライナ国民は絶対に勝利を収めるだろう」と語った。

 

22年のIPO、調達額4割減 相場軟調響き小粒化: 日本経済新聞

国内での新規株式公開(IPO)の規模が小粒化している。東京証券取引所を中心に国内での上場件数は2022年に90社超と高水準を保つが、1社あたりの市場調達額は前年より4割減る見通しだ。ウクライナ危機や世界経済の不透明さなどで相場が軟調だったことが響いた。大型案件が上場に慎重になり、規模の小さな案件が目立った。投資家は収益性をより重視しており、株価は赤字企業には厳しい局面となっている。

 

円高×株安 日銀、おまえもか!? | トウシル 楽天証券の投資情報メディア

12月20日、日銀の政策決定会合はYCC(イールド・カーブ・コントロール)の要である10年物国債金利の許容変動幅を、0±0.25%から±0.5%に拡大する決定をしました。日本市場ばかりか世界の市場も、かたくなに動かないと思っていた日銀が、金融引き締めに転換した「かの」サプライズになり、株安、債券安(金利上昇)、円高ドル安と波紋が広がりました。メディアでは、大見出しで異次元緩和の見直しだ、解除だと大騒ぎです。アベノミクスの終わりの始まりといった論調も多数。

しかし、上昇動意をくすぶらせていた10年物金利とはいえ、日銀がコントロールする上限を0.25%から0.5%にわずかに引き上げた微調整です。実体経済への影響も限定的でしょう。それほど大騒ぎするものか、ここからダムが決壊するように異次元緩和の牙城が崩れるかの拡大解釈をすべきなのか、私には疑問です。

むしろ、今回垣間見せた円高、株安のリスクが示唆するように、2023年には、日銀の政策修正に恐らく強い制約がかかると見ます。後継総裁が異次元緩和解除の意向を抱いているかもしれません。しかし、強行するとなれば、ほんの少し踏み込むだけで、円高と株安があおられ、日銀が日本を苦境に陥れたかの批判が出る、そんな巡り合わせの悪い局面になるのではないか、という想定です。円安は日銀のせいであるかの批判論調が、手のひら返しですね。円安も円高も動いて不安なことは日銀が悪い、これは昔から変わらない国内論調でもあります。

日銀の微々たる政策修正が、サプライズとされ、ショックと受け止められたのはなぜでしょう。地蔵のように動かないはずのものが、ピクッと動いたから、というのが第1の理由です。もっと動いたらと想像したらさらに怖くなったというのが第2の理由、ただし、そもそもビクつく事情を人々が抱えていたから、大仰に反応してしまったというのが第3の理由、といったところでしょう。特にドル/円が137円から一時130円台まで急反落し、為替恐怖症が強い国内論調をあおった面がありそうです(後述で相場力学について詳しく解説します)。

米景気後退のリスク、米株の逆業績相場のリスクを侮ってはいけない
政策金利が上振れても、中長期金利の反落は起こり得る
円安はメリット、デメリット両面あるものの、マクロ全体で見て日本の経済にも株価にもプラス
海外の株式などリスク資産の相場が苦境の中、日本投資家は円安による為替差益で大いに救われた(図3)
円高はこのプラス面を消し、マイナス作用が浮上する
米景気悪化、米金利低下の局面はドル安円高をもたらす可能性が高く、日本経済は圧迫され、日本株がアンダーパフォームしやすい

2023年は、まさにこの1から6への巡り合わせが現実のものになるかと、警戒を解くことができません。そんな状況で、日銀の後継総裁がアベノミクスの見直しを信念とする人でも、自ら円高、株安をあおりかねない決断を下せるか、大いに疑わしく考えています。逆に、米経済がそれほど悪化しておらず、インフレ高止まりへの懸念が再燃しているうちにと、異次元緩和の修正に動いても、短期的な相場の急反落か、後々の反落か、いずれにしても政策判断の間の悪さが問われかねないでしょう。

 

中国企業の米上場廃止で猶予期間を2年に短縮-大統領の署名で成立へ - Bloomberg

連邦議会を23日に通過した2023会計年度(2022年10月-23年9月)の包括的歳出法案には、中国本土と香港に本拠を置き監査結果の検査を認めない米上場企業について、上場廃止までの猶予期間を現行法の3年から2年に短縮する条項が盛り込まれており、成立の運びだ。

ホワイトハウスはバイデン大統領が法案に署名して成立させるとしており、ニューヨーク証券取引所(NYSE)やナスダックで取引される約200社に影響が及ぶ可能性がある。

 

中国、コロナ感染の日次データ公表中止-地方の発表と食い違い - Bloomberg

ブルームバーグは先に同委が21日に開いた内部会議の議事録を基に、最大で中国人口の18%近くに相当する2億4800万人が12月1-20日に感染したもようだと報道。北京や上海など大都市では医療体制が逼迫(ひっぱく)、火葬場にも長い列ができている。

上海市に接する浙江省は1日当たりの新規感染者が現在100万人強であり、ピークには200万人に達すると予想していると明らかにした。浙江日報が25日、地元当局者の医療関連ブリーフィングでの発言を引用して伝えた。中国本土全体をまとめた公式データによれば23日の新規感染はわずか4103人で、両者の間には大きな開きがある。

広東省東莞市の衛生健康局は23日、毎日25万-30万人が感染しているとソーシャルメディア微信ウィーチャット)を通じ発表。モデルリングに基づく推計と専門家の分析を引用した。製造業の拠点である東莞市の人口は2021年時点で約1050万人。

 

来週の相場見通し(12/26~12/30)|村松 一之(和キャピタル 運用本部部長)|note

今回の日銀金融政策決定会合の変更は、Blommbergサーベイにおける著名エコノミスト47名で予想した人は誰もいなかった。要するにサプライズである。何がサプライズかといえば、タイミングである。決定された「YCC政策における10年金利の許容変動幅を従来の0%を基準に±0.25%から±0.5%に拡大」という内容自体は、市場においては全くサプライズではない。いずれ、そうなるだろうと広く予想されていたものである。但し、市場では「黒田日銀総裁の任期中ではなく、次期総裁の下で行われるだろう。早くても春闘の状況を確認してからだろう」との見方が一般的であった。

これは完全に個人的な推察に過ぎないし、黒田総裁の任期、次期総裁への配慮など色々な複合要因であろうが、私は「為替水準がベストタイミングであったから」と考えている。どういうことか?仮に今年の10月のように為替が150円を超えて、明らかに日本経済において行き過ぎた円安リスクが語られているときに今回のような中途半端な金融政策の修正をしてしまうと、「日銀は円安防止のために金融政策を修正した」と市場に捉えられてしまう。そうなると、為替が円安に進行するたびに、日銀の金融政策が変更になるという思惑から、市場は乱高下してしまう。投機筋の関心を駆り立てることになる。為替政策は財務省の所管であり、日銀の金融政策は結果として為替に影響を及ぼすものの、為替政策のために金融政策を行うわけではない。この原則を崩壊させるリスクは大きいので、円安局面では金融政策の変更がむしろできないのである。

これはまだ何とも言えない。海外の市場参加者が休暇から戻ってこないと何とも言えない。しかし、今のところ円債市場は全く混乱していない。一番不安定になっているのが為替市場であり、その為替市場の影響で株式市場も弱い。しかし、日銀の金融政策の影響をダイレクトで受ける円債マーケットは、秩序だった動きをしているのだ。円金利の10年は、仮に日銀がYCCの幅を±0.5%に拡大したら、一夜で10年金利の水準は0.25%から0.5%になるだろう。日銀は今度は0.5%で無制限に国債を買う必要に迫られる。これが一般的な見方であった。しかし、日銀の金融政策の当日に0.46%程度まで10年金利は上昇したものの、その後は低下している。0.5%に届いてもいないのだ。何故、こんなことになるのか?本邦投資家には、もう売るべき国債をほとんど保有いていないのだ。

日銀ショックの余波はまだ継続している。というか、まだ本格的に開始するのはこれからだろう。円金利は所詮は上限は0.5%となるであろうから、それほど問題はない。市場の関心は為替である。為替相場はまだ、いつでも130円割れをトライできる射程距離圏にあるため、要注意だ。日経平均株価ドル円が135円~140円のレンジ内に移行するまでは、為替が気になって、なかなか力強い反発は見込めないかもしれない。
材料としては26日に黒田総裁が日本経団連審議委員会で講演する。先般の会見のようにYCC政策の修正は、金融引き締めではないと繰り返すのだろう。28日は日銀金融政策決定会合の主な意見が公表される。来年の1月5日は10年国債の新規入札がある。1月中旬には東京都債の値決めが予定されている。

今年は銀行株に追い風が吹いた。特に地域金融機関の株は稀に見る堅調さであった。地域金融機関の株価上昇は、日銀の金融政策の修正で地銀を苦しめてきたマイナス金利が解除されるのではとの思惑や、法律改正で地銀の業務拡大が可能になったこと、アクティビストの地銀への注目、株価の割安さ、地銀の生き残りをかけた改革が加速してきたことなど、複合要因であろうが、今回はYCC政策の修正に伴う短期的なポイントだけに絞りたい。下のチャートは、東証銀行業指数であるが、今年の厳しい相場の中でも、年初荒大きく上昇している数少ないセクターであり、11月以降は売買高も含めて、一段と上昇ペースを加速させている。

まず金利が上昇すると、金融機関の株が買われやすいのは、貸出金利が上昇するのに対し、預金金利はなかなか引き上げられないため、単純に預金と貸金の利ザヤが拡大し、いわゆる銀行の本業の業績が上向くためである。また、金融機関は貸金よりも預金が多く、大量の余剰資金を日銀への預け金や有価証券運用に使っている。金利が上昇すれば、そうした余剰資金の運用の資金利益が改善することが予想されるわけだ。
しかし、まず今回のYCC政策の修正では、貸出金利はほとんど上昇しない。市場性貸出金利のベースとなるTiborの日銀金融政策決定会合後の動向が下のチャートだ。急上昇しているように見えるが、なんと0.135%から0.14364に僅かに1bp上昇したに過ぎない。銀行の過当競争も激しい中、これでは貸出金利を引き上げようがないだろう。

金利が上昇して、銀行の本業収益が改善するためには、短期金利が上昇する必要があるのだ。それにはマイナス金利政策の解除が伴う必要がある。逆にマイナス金利が解除され、例えば現在の▲0.1%から+0.1%等に引き上げられると、そのインパクトはかなり大きい。短期金利も急上昇するし、日銀当座預金からも利息を得られるようになるからだ。残念ながらYCC政策の修正で長期金利だけが上昇している場合は、むしろ地域金融機関の有価証券評価損を極めて悪化させる。近年は地域金融機関が外債での実損や評価損の拡大が話題になってきたが、円債と外債では大きな違いがある。外債の場合は、逆ザヤであるほか、単純な有価証券投資のために、地域金融機関は保有している外債をロスカットする。例えば政策投資で保有している株式の益と併せて損切りしてポートフォリオリオを改善させる。しかし、円債の場合には地域金融機関は、ほとんどロスカットはせずに、満期まで保有することを選択するだろう。何故なら、まずは逆イールドでなく多少なりともインカムが得られること、そして資金があり余っており、何かキャッシュを潰するために投資する必要があるからだ。円債をロスカットして、円資金が戻ってきても、困るのだ。また地域金融機関は国債だけではなく、地方債なども大量に保有している。この地方債の評価損悪化も大きい。足元では地方債のスプレッドが拡大しており、地域金融機関を苦しめている。来年以降も日銀の政策変更への思惑が高まり、円金利上昇圧力や地方債のスプレッド拡大が続くとしよう。それでも地域金融機関は円債や地方債は保有を継続する。満期まで持てば損はしない。しかし、その過程で評価損だけは、かなり拡大することになる。この評価損の拡大を投資家が冷静に受け止めることができるかどうかだ。リートも問題だ。リートは海外投資家がこれから売り越し主体に転じていくだろう。リート売りも海外投資家にとっては、日銀と戦うディールの1つだ。そして、リートへは地域金融機関もかなりの投資をしており、リートが下落すると、これまた評価損拡大になるし、地域金融機関はリートはロスカットを検討し、それが実現損として決算を悪化させることになる。しかもリートを損切りしてしまえば、この低金利下の環境で高い配当利回りを失い、業務純益を減らす要因になるかもしれない。このように今回のYCC政策修正は、銀行の業績を改善させるというよりは、次の決算等の短期的な視点では、有価証券評価損を拡大させるものだ。地域金融機関への投資は、日銀のマイナス金利解除も見据えた長期的な視点が必要になるだろう。

 

日本銀行がYCCを突如修正した背景と評価 : 炭鉱のカナリア、炭鉱の龍